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労働問題

【未払い賃金の請求】

 退職後、在職中の未払賃金(残業手当や休日手当なども含む)は、いつまで請求可能でしょうか?

 

 民法174条1号は、「月又はこれより短い時期によって定められた使用人の給料に係る債権」は、1年間これを行使しないことにより時効消滅すると規定しています。

 しかし、労働基準法(以下「労基法」といいます。)は、労働者保護の観点から、賃金の消滅時効期間を2年とすると定めています(115条)。この労基法の規定は、民法の規定に優越する特別規定と位置付けられますので、未払賃金の消滅時効期間は2年ということになります。

 ところで、平成29年5月26日に成立した「民法の一部を改正する法律案」では、債権の消滅時効期間を一律的に扱い、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」又は「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」と定められました(新民法166条1項1号・2号)。

 

 現時点では、この民法改正に伴う労基法115条の改正は予定されていないものの、新民法の成立により、賃金債権の消滅時効期間が民法よりも労働者を保護する労働基準法の方が短いということになってしまうことから(新民法では5年なのに労基法115条では2年)、労基法115条の消滅時効期間について見直しが行われることになるだろう、といわれています。

 なお、退職金については、現時点でも、消滅時効期間は5年とされています(労基法第115条)。

消滅時効の中断事由(時効の完成を阻止する事由)も、民法の一般原則によるべきことになります。

 

 裁判上の請求は時効消滅事由のひとつですから、未払賃金請求訴訟を起こせば、消滅時効を中断させることができます。

 

 また、訴訟に先立ち内容証明郵便などで賃金の支払いを請求(これを催告といいます)しておけば、時効完成間際であっても、催告の時から6か月間は時効が完成しないという効果が付与されるので、とりあえず内容証明郵便を送付しておいてから、裁判を起こすということも可能です。

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