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​企業法務

【経営者の承継問題】

 この問題も、新聞などのメディア報道を賑わせることが少なくありません。ドラマ化もされたでしょうか?

 今度はこれについて、見てゆきましょう。

 

 経済産業省の中小企業庁が公表する「(中小企業の)事業承継の現状と課題について」を要約・抜粋すると、以下のとおりとなります。

 

 ①2020年頃に数十万の団塊経営者が引退時期にさしかかる。

 ②直近10年では法人経営者の親族内承継の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外承継が6割超に達していることに照らすと、経営者の高齢化の状況から事業承継のより一層の円滑化を図ることが不可欠であるが、このような状況を踏まえ、 親族内だけでなく第三者も含めた親族外承継も併せて促進していく必要がある。

 ③経営者の年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まるのに対して、経営者が交代した企業や若年の経営者の方が利益率や売上高を向上させているので、計画的な事業承継は成長の観点からも重要である。

 ④60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定しており、特に個人事業者においては、約70%が「自分の代で 事業をやめるつもりである」と回答している。廃業の理由としては、「当初から自分の代でやめようと思っていた」が38.2%で最も多く、「事業に将来性がない」が27.9%で続く。また、「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見つからない」との後継者難を理由とする廃業が合計で28.6%を占めている。

⑤廃業予定企業であっても、3割の経営者が、同業他社よりも良い業績を上げていると回答し、今後10年間の将来性 についても4割の経営者が少なくとも現状維持は可能と回答している。そうであるにもかかわらず、事業者が事業承継を選択しない場合には、③に挙げるような企業もそのまま廃業する可能性が高く、それにより当該企業が維持している雇用や技術、ノウハウが失われてしまう可能性が高い。

 

⑥後継者問題の相談相手として「相談相手はいない」と回答した経営者は36.5%で、最多の回答である。 ⇒ 多くの企業の事業承継問題は水面下に隠れており、支援機関による掘り起こしが必要。中小企業の地域におけるワンストップ窓口として、中小企業庁が全国に設置しているよろず支援拠点に対する相談のうち、事業承継に関しては年間2000件あまりの相談(全体の約1%)があり、相談件数が多いものとしては、売上げ拡大、施策活用、事業計画策定、経営改善・事業再生が挙げられる。

 

⑦廃業時に誰にも相談をしなかった理由を尋ねたところ、「解決するとは思えなかった」、「何とかできると思った」、「誰にも相談しないと決めていた」が7割を占めている。

 

⑧企業業績が必ずしも悪くない企業であっても、後継者が決まっていない、又は廃業予定である企業が数十万者存在しており、こうした企業の事業承継や事業引継ぎの取組を早期に促すことで、中小企業の技術やノウハウの継承を図ることが重要である。

 

 以上のことから、中小企業の多くが、経営が悪化しているわけではないのに、後継者問題で悩み廃業するケースが多いということが理解できます。

 

 このような現状を打開するための一助として、商工会議所や同業種組合による支援体制が構築されていますが、弁護士も地域の中小企業支援の一環として承継問題に取り組んでいます。

 このほか、合併や事業譲渡といった手法を用いて円滑に事業承継を実現することも可能です。

 

 平成20年5月に、「事業承継に伴う税負担の軽減や民法上の遺留分への対応をはじめとする事業承継円滑化のための総合的支援策を講ずる「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立し、いくつかの改正を経て今日に至っています。

 

 この法律は、経営の承継に伴い発生する、

(1)相続税及び贈与税の負担、

(2)事業承継時の資金調達難、

(3)民法上の遺留分による制約、

といった様々な諸問題に対応するための法律です。

 

 例えば、中小企業の株式等を先代経営者から相続又は贈与により取得した場合に、相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。

 その他、税制面のみならず、金融支援の面についても特例措置が設けられています。

 

 当事務所では、中小企業における事業の承継問題について、ご相談を承っております。

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