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離婚・男女問題

【親権と監護権の違い】

 すでにご自身でお調べになっておられる方から、質問を受けることが少なくない言葉です。

 

 内容が専門的になるので、今度は少しだけ難しいですよ。

 

 まず、民法818条1項では「未成年の子は、父母の親権に服する。」と規定しており、この「親権」とは、親が未成年の子を一人前の社会人に育成する権能かつ責務のことです。

 

 「親権」は、「親」の「権」と呼称されるものの、むしろ義務的な性格の強いものであることは古くから指摘されるところ、親の利益を図るためというよりも子の利益、つまり子の福祉のために行使されなければならないものとされています。

 

 「親権」の内容(効力)は、一般に、次の2つに分けられます。

① 子の身上に関する権利義務(身上監護権)

② 子の財産に関する権利義務(財産管理)

 

 つまり、「親権」とは、①未成年の子を監護する(一人前の大人にたるために子を監督・保護し養育する)権能かつ責務と、②未成年の子の財産を管理(子の財産を管理したり、子の財産上の法律行為につき子を代理したりする)権能と責務とによって構成されており、「子の健全な発育・成長を実現させる」ため、親は子の生活費や養育費の経済的負担を負うという「扶養」義務を負うのです。

 

 一方、民法820条は「親権を行う者は子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し、義務を負う。」と規定しており、これがいわゆる「身上監護権」です。

 

 この「身上監護権」の内容(効力)は、次の5つに分けられます。

① 居所指定権(民法821条。子どもがどこに住むかを決めることができる権能)、

② 懲戒権(民法822条。教育上必要な範囲で躾として叱責する権能)

③ 職業許可権(子どもが就職したり開業したりすることを許可する権能)

④ 第三者に対する妨害排除権(第三者が子を不当に拘束する場合に、親権者の元へ子を戻すよう請求できる権利)

⑤ 身分上の行為の代理権(子の財産上の行為に対する代理権に加え、子の福祉の観点から必要である場合に備え、民法が個別的に規定している身分行為に対する代理権で、例えば、15歳未満の子の氏(苗字のこと)の変更、15歳未満の子の養子縁組や離縁、相続の承認や放棄を、親が子に変わって決めるという権能)

 

 ちょっと難しかったですね…

 

 今度は、「離婚の手順」にあった3つの段階に応じて、「親権」や「監護権」が、どのように関係するか見てゆきましょう。

 

・父母が協議離婚をするときは、協議で一方を親権者と定めなければならない(民法819条1項)、

・協議が調わないとき、または協議することができないときは、家庭裁判所が父母の請求により協議に代わる審判をすることできる(民法819条5項)。

・裁判上の離婚の場合は、裁判所が父母の一方を親権者と定める(民法819条2項)。

 

 そして、離婚に際して、子を監護すべき者を特に定めなかった場合には、親権者となった父又は母の一方が子を監護することになります。

 

 その後、離婚により親権者となった父母の一方が、子の監護に不適切であるときは、親権の変更まではいかずとも、親権者でない他方の父母または第三者に子の監護をさせることができ、結果、離婚によって親権者とならなかった方の親が、監護権となったときは、子を監護する(子と暮らして養育する)こととなります。

 

 この、親権者とならなかった親が監護権を有する場合を「監護権者」と呼ぶことがあります。

 

 また、離婚に際し、子を監護すべき者を定めなかった場合、親権者となった父又は母が子を監護することとなりますが、親権者となった一方の親が子の監護に不適切あるときは、親権者でない他方の父母又は第三者にこの監護をさせることができ、親権者でない方の親が監護者となった場合、これを「監護権者」と呼ぶことがあります。

 

 昭和40年代、子の親権・監護をめぐる父母の紛争が激化したことから、実務では、紛争の早期解決を図るため、父母の一方を親権者とし、他方を監護者とする解決策が採られるようになりました。これを「親権と監護の分属」と呼び、現在ではさらにこの監護自体を(平日は母で、週末が父などという具合に)父母間で分け合うような事例も報告されています。

 

 「親権と監護」の分属が生じた場合、監護者は、子に対する教育、居所指定、懲戒などの権能を行使し、親権者は監護以外の権利義務、例えば、子の財産を管理し、法律行為を代理するほか、15歳未満の子の氏の変更や養子縁組の代諾を行うなどの権能を行使することとなります。

 

 父母が離婚していない間は、父母が親権者であり、共同して親権を行使するので、子の身上監護と財産管理(民法が特に定めた一定の身分上の行為も含む)について、いずれの親がどのように行使するのかについての問題は起きないのですが、離婚により親権者とならなかった方の親が、監護者となった場合には、親権を構成する①身上監護権と②財産管理権とが分属することになるので、両権能の違い顕在化することがあるのです。

 

 難しかったですね…

 やはり、もっと噛み砕いて、口頭で説明を受けたほうが、いいかもしれませんね。

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